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管理費について法人と個人の差別的扱いを設けた規約の有効性

事件名:管理費等請求事件
裁判所:東京地方裁判所
判決日:平成2年7月24日

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マンション名: 本郷ハイツ    
事件番号 平成元年(ワ)第6195号 事件名 管理費等請求事件

裁判所

東京地方裁判所 判決日 平成2年7月24日
掲載文献

判例タイムズ754号217頁 |金融・商事判例867号39頁|

判示事項

マンションの管理費につき、法人所有の場合と個人所有の場合とで金額に約1.6倍の差を設けていた管理規約及びこれに基づく金額決定の集会決議が区分所有法の趣旨及び公序良俗に照らして無効であるとされた事例

判決要旨

区分所有建物の共用部分の管理費及び修繕積立金の負担につき法人の区分所有者と個人の区分所有者との間に1.65倍の格差を付けた管理組合総会の決議は、建物の区分所有等に関する法律19条の趣旨及び民法90条の規定に違反し無効というペきである。

第一審 hanrei 東京地方裁判所 平成2年7月24日 管理費等請求事件
参照条文

区分所有法第19条(※1)

引用判例

東京地方裁判所 昭和58年8月24日 管理費用等請求事件
東京地方裁判所 昭和58年5月30日 管理費等請求(A、B事件)、和解無効確認(C事件)事件

被引用判例:

福岡地方裁判所小倉支部 平成6年4月5日 組合規約無効確認等請求事件
東京地方裁判所 平成5年2月26日 管理費等請求事件

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訴訟の背景と経緯

昭和49年に東京都文京区で分譲された総戸数37戸/地上10階建のマンションです。

被告が、昭和63年1月21日より、法人名義で当該マンションを購入し住居として使用していました。
管理組合が、法人組合員と個人組合員に管理費・修繕積立金の格差(※1)を設けて請求したのに対して、被告法人が不服とし差額分の管理費・修繕積立金の支払に応じませんでした。被告法人の管理費・修繕積立金の差額未収金分(※1)平成元年12月31日までに93万7144円に達し、組合が原告となり「管理費の支払請求および損害賠償金」「管理費の確認請求」を提訴しました。

※1. 個人組合員(管理費1300円/1坪 + 修繕積立金390円/1坪)×1.723=法人組合員 2912円/1坪
平成元年5月28日より修繕積立金が値上がりし格差が1.732から1.651倍になっていました。
法人組合員が32.6坪を所有していたので原告提訴時の平成元年12月31日時点で購入から約2年弱の差額分トータルが93万7144円に達していました。

※2. (原告の主張・被告の抗弁※2)
仮執行宣言
判決の確定前に仮執行の宣言に基づいてなす強制執行。

原告の主張(原告管理組合)

1. 被告区分所有者が支払わなかった差額分93万7144円およびこれに対する遅延損害金(年5パーセントの利率による)の請求。

 (a)管理規約に基づき、昭和60年3月24日の原告管理組合の設立総会および、平成元年5月28日の定例総会において、法人組合員の管理費・修繕積立金の支払金額を決議した。

 (b)管理規約第13条(※1)に基づき管理費等について法人組合員と個人組合員との負担の差を設けている。

2. 被告区分所有者が原告に対して支払うベき管理費が月額7万3130円および、修繕積立金が月額3万0360円であることの確認請求。

3 訴訟費用は被告の負担とする。

4 仮執行宣言(※2)

被告の抗弁(被告区分所有者)

1.本件マンションを維持・管理するために、管理費・修繕積立金を支払わなければならないことは認めるが、管理規約第13条2項(※1)に相当する規定はなかった。

2.昭和60年3月24日の原告管理組合設立総会において、支払期日についての総会決議があったこことは認めるが、その他の徴収額については否認する。

3.昭和60年3月24日の原告管理組合の設立総会および、平成元年5月28日の定例総会での"決議の内容"は、法人組合員と個人組合員との間に合理的な限度を超えた格差を設ける不平等なものであり、"これらの決議"はいずれも区分所有法の趣旨び公序良俗(※3)に反し、無効である。

 

 

※1. (争点(※1))
管理規約第13条(※裁判所では、規約を決議したという原告の主張をあいまいであるとしています。)
1.組合員は、敷地及び共有部分等の管理に要する費用を負担しなければならない。
2.前項の費用の負担については、法人組合員と個人組合員の負担との差を設けることが出来る。
3.第1項の額並びに前項の差及びその割合については、総会の決議による。

※2. 仮執行宣言 (訴訟の背景と経緯(※1)で解説)

※3. (裁判所の判断と判決(※1)、争点(※1))
公序良俗(民法第90条)
公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

争点

法人組合員と個人組合員とによって、管理費等の支払金額に格差を設けるのは公序良俗(※1)に違反するか否か?

裁判所の判断と判決

法人組合員に対して差別的管理費を徴収することについて、1. 管理費等を経費処理することによって税負担が軽くなる2. 共用部分の使用頻度3. 共用部分使用における収益の程度に応じて負担すべきだ、などの主張がなされる場合があります。これらの点について、まず各税法については、別途の理屈や、目的に従って課税の仕方を定めているので、単に経費化できるということから税負担が小さいとはいいきれません。(個人事業者も経費とすることができるし、給与所得者は別途各種の控除があります)。共用部分の使用頻度については瑣末議論となり、誰もが納得できる根拠を見出すことは困難だといえます。また、法人は通常営利を目的とし、収入も高いはずという点も、我が国に多い小規模法人を考えると必ずしもそうとは断言できません。しかも、いずれにせよ、負担力に応じるて差別化することの合理性は高くない上に、名義上の個人と法人といった区分方法では、不適切だといわざるを得ません。

1.区分所有法第19条(※1)は、持分に応じて管理費を徴収することの例外を規約で定めることを認めており、管理費等の徴収額につき所有名義により法人組合員と個人組合員とで格差を設けること自体が、直ちに区分所有法に反するとまではいえない。 しかし、管理費等の額につき法人組合員と個人組合員とで格差を設けることについては、その該当者の承諾を得ているなど、特段の事情のない限り、その格差が合理的限度を超え、一部の区分所有者に対して、特に不利益な結果をもたらすことまでは是認していないと考えるべきである。

2.全員加入の非営利的な団体において、多数決で定められた管理費・修繕積立金などに格差を設ける規約、決議等は目的またはその差別の方法が合理的ではなく、一部の者に特に不利益な結果をもたらすときは、私的な団体自治の範囲を超え、原則として民法第90条(※2)の規定する公序良俗に反し、その規約、決議等は無効となることがある。

3.理組合は全員加入である上、規約や決議なども、各区分所有者の専有部分床面積の割合による多数決で決定され、少数派に不利な定めが設けられる場合がある。区分所有法も、直接管理費等について定めたものではないが、少数者の保護を図るために、規約の設定、変更等につき一定の制限を設けている(区分所有法第31条1項(※3)後段)。

4.昭和60年3月24日管理組合設立以前から、法人組合員と個人組合員とで差異が設けられているという証言については設立総会開催通知書に、議案として、規約案承認や使用細則の承認の件は記載されているが、上記証言についての議案は記載されていないことが認められており、裏付けが希薄である。なお使用細則の二条(11)項において「各共有者はその持分に応じて建物共有部分及び土地の通常の管理費を負担する。」等と定められている決議の具体的内容について証拠上必ずしも明確ではなく原告が総会によって決議されたという供述はあいまいであり、少なくとも手続上は、法人組合員につき、持分に応じない管理費等を徴収するのは違法といわざるを得ない。

--- 主 文 ---

1.原告の請求をいずれも棄却する。
2.訴訟費用は原告の負担とする。

※1. (この判例による組合の留意点(※1))
区分所有法第19条(共用部分の負担及び利益収取)
各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。

※2. 民法第90条 (原告の主張・被告の抗弁(※3)で解説)

※3. (この判例による組合の留意点(※2))
区分所有法第31条1項(規約の設定、変更及び廃止)
規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

 なお、判例中にある「二 抗弁について…区分所有法も、直接管理費等について定めたものではないが、少数者の保護を図るために、規約の設定、変更等につき一定の制限を設けている(同法三条一項後段)。」の区分所有法条項の捕捉については同法三条に一項が存在せず、内容から判断して、区分所有法第31条1項後段の「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。」ではないかと推測されます。

この判例による組合の留意点

本判例は、マンションの管理費・修繕積立金の負担割合を法人組合員と個人組合員とで格差をつけたことが、公序良俗に反し無効であるとした事例です。
本件マンションは昭和49年に分譲され、昭和60年に管理組合が設立、提訴されたのが平成2年です。分常時から提訴までの間、多数派の個人組合員が、事実誤認により管理費を取りすぎていたのか、被告の組合員が、管理組合に加入してから意図的に有利に運営しようと試みたのか。いずれにしても、ほとんどの組合員が、管理組合の運営に対して無関心だったかもしれません。
裁判所の判断は、総会の議案書や使用細則において手続きの不備があることを指摘し、さらには民法第90条(※1)(公序良俗)違反や区分所有法第31条1項(※2)に基づいていないなどし、管理費等の格差を無効としました。
管理費や修繕積立金などの徴収において、区分所有法第19条(※3)に則り、規約変更などで例外を定め、所有者名義により法人組合員と個人組合員とで格差を設けることができます。しかし、管理組合は全員加入である上、規約や決議なども、各区分所有者の専有部分の床面積の割合による多数決で決定され、少数派に不利な定めが設けられる場合があります。そのため区分所有法第31条1項※2では、規約の設定、変更等につき「区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない」と制限を設けています。

※1. 民法第90条 (原告の主張・被告の抗弁(※3)で解説)

※2. 区分所有法第31条1項(裁判所の判断と判決(※3)で解説)

※3. 区分所有法第19条(裁判所の判断と判決(※2)で解説)

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