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管理者の解任等請求事件

事件名:管理者解任等請求事件
裁判所:東京地方裁判所
判決日:平成2年10月26日

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マンション名: パレ・エテルネル    
事件番号 昭和59年(ワ)第12371号 事件名 管理者解任等請求事件

裁判所

東京地方裁判所 判決日 平成2年10月26日
掲載文献

判例タイムズ764号184頁

判示事項

区分所有者としての地位を兼ねる区分所有建物管理者につき、区分所有者としての管理費不払等によって区分所有者との間の信頼関係がなくなったとして、その解任請求が認められた事例

第一審 hanrei 東京地方裁判所 平成2年10月26日 管理者解任等請求事件
参照条文

区分所有法第25条 (※1)

引用判例

大阪地方裁判所 昭和61年7月18日 債務不存在確認等請求事件
東京地方裁判所 昭和53年1月26日 管理人解任請求事件

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訴訟の背景と経緯

パレ・エテルネルは昭和57年3月に東京都新宿区で、被告が建築・分譲した総戸数68戸/地上13階/地下1階建の有名建築家設計のマンションです。

被告がマンションを分譲する際に、被告と区分所有者原告らを含む買受人全員との間で、共有部分の管理に関する管理規約が合意されました。その管理規約により、被告を管理者とし、管理業務(※1)が委託されました。(なお、被告は本件マンションの未分譲部分の区分所有者でもあります。)

パレ・エテルネル管理組合(その他の区分所有者ら)が原告(※2)となり、管理費を支払わず、委託された管理業務も行わない被告に対して、「管理者の解任」「管理人室の退去・明渡し」「管理用具等の引渡し」「未払管理費ならびに年18パーセントの割合による遅延損害金の請求」を提訴しました。

原告によると、被告には以下のように、管理者として適しない事情がありました。

●未分譲部分の区分所有者として管理費等月額70万7500円の支払義務があり、昭和57年4月から昭和59年8月分までの合計2501万7500円の管理費等を支払っていない。

●貯水槽や高置水槽の清掃を行わず、屋上排風器・パイプなどの塗装を剥げたままに、あるいは店舖裏ダクトを汚れたままに放置。 各階の開放廊下の定期清掃、排水管の定期点検・清掃をほとんど行わず、大雪に際し雪かきも行わない等、管理業務を邂怠している。

●決算報告書作成が遅延し内容が簡略で、意味不明な点もあった。

●被告は、本件マンションの分譲の際に、区分所有原告らを含む譲受人に24時間の管理体制をとる旨約しておきながら、夜間管理人が本件マンションに駐在していないことが多い。

●本件マンションの管理を委託しているC株式会社には高額の委託料を支払い、C株式会社は、更に低額の委託料で管理をD株式会社に委託している。
しかも区分所有者らに諮ることなく、管理料を昭和57年12月に月額62万円から90万円に引き上げ、これを同年10月にさかのぼって支払っている。

●被告は、区分所有者原告らに対し、被告所有の本件マンションの付属駐車場の使用契約の解約をほのめかし、原告組合からの脱退を勧誘し、区分所有者との信頼関係を崩した。

被告は昭和57年度の報告をなかなかせず、昭和58年6月ころにようやくその報告をしたものの、内容が簡略で、意味不明な点もありました。そこで区分所有原告らが詳しい報告を被告に再三求めましたが、被告はこれに応ぜず、原告らが被告宛に送った「会計監査請求書─昭和58年9月24日付及び10月3日付」も受領しませんでした。そこで区分所有原告ら有志は、昭和58年10月24日に本件マンションの管理を行うことを目的とした原告組合を結成しました。

被告は、昭和58年10月25日付で、より詳細な「決算書」を作成し、これを昭和58年11月8日ころ区分所有者に交付しました。しかし、被告の管理費等の不払(昭和57年3月から翌59年3月まで21室分合計950万9300円とそれ以降の分)について納得できなかった原告らは、11月11日に報告に関し被告の説明を受ける集会を開き、被告代表者の出席を求めたところ、被告の取締役Sが出席しましたが、結局納得のいく説明がなく、取締役Sは19日までに回答すると約しながら、やはり回答をしませんでした。

※1. 管理委託内容

(1) 月額で、専有部分面積(販売面積) 一平方メートル当たり約350円の管理費及び専有部分面積1平方メートル当たり約35円(管理費の10パーセント)の補修積立金の各区分所有者からの徴収

(2) 1) 共有部分の光熱費の支出
2) 共有部分の清掃
3) エレベーターの整備の維持
4) 給排水設備の保守
5) 消火設備の管理
6) 管理費の維持管理
7) その他、本件マンションの維持管理に必要な事項
(管理規約において、管理費等の遅延があるときは、年18パーセントの割合による遅延損害金を請求する旨定められていました。 )

※2. (原告主張 ※1争点 ※1、裁判所の判断と判決※2)
原告組合は、本件マンションの区分所有者ら有志で組織された団体に過ぎず、区分所有法にいう団体とは異なります。また、「管理者を解任後、改めて、区分所有者全員の集会で、管理者を決すべきである。」としています。昭和58年10月24日結成の管理組合は当事者適格が認められませんでした。
共同の利益に反する行為をする者に対しての是正を求めることについて、管理組合の構成員各自が原告となりうるための法的根拠が、現在の区分所有法には与えられていません。管理組合が訴訟するための当事者適格を得るためには、総会決議を経て初めて原告となれます。

参考判例解説ページ >>『理事長の責任追及および訴訟の当事者適格』

原告の主張
(区分所有者原告ら・原告組合※1)

区分所有者原告ら

1 管理者の解任請求。

原告組合(※1)

2(a)1階管理室からの退去・明渡し請求。

  (b)管理用具等の引渡し請求。

  (c)管理組合の預金債権合計863万426円の請求。

  (d)滞納管理費2051万7500円および、規約による年18パーセント遅延損害金の請求。

 

 

 

被告の抗弁(管理者)

1(a)本件管理規約上、専有部分の引渡し時から、管理費の支払義務は発生するので、分譲するまでは管理費の支払義務はない。

  (b)未分譲の区分所有権利を有していても、商慣習として分譲業者は管理費を支払わなくてよい。

2(a)管理費の不払いは本件管理規約の誤解に基づくもので、昭和60年4月からは支払っている。また、未払いの管理費に関しては昭和61年12月に支払っている。

  (b)区分所有原告らのうち16名が管理費を払っておらず、自ら管理費等を支払わないで、被告の解任事由として主張することは信義則(※2)に反する。

※2. (裁判所の判断と判決※5)
信義則
社会共同生活において、権利の行使や義務の履行は、互いに相手の信頼や期待を裏切らないように誠実に行わなければならないとする法理。信義誠実の原則。

争点

1 管理者には管理費等の支払義務があったか?

2 管理者としての職務を行うにあたり、適しない事情があったか?

3 原告組合(※1)は被告に対し1階管理室からの退去・明渡しや管理用具等の引渡しなどを求める権利はあるか?

裁判所の判断と判決

区分所有者原告らは、区分所有法第25条2項(※1)(不正な行為などで管理者職務に適しない事情があるとき、その解任を裁判所に各区分所有者が請求できる)に基づき、管理費不払いや、管理者としての義務である業務および収支状況報告の遅れ、被告所有の駐車場解約をほのめかした原告組合(※2)からの脱退勧誘などを行った被告管理者の解任を求めて提訴しました。裁判所の判決は、被告には管理者としての業務を行うに値しないとして、解任請求は理由があるとしました。しかし、管理室の明渡しや滞納管理費請求(共同の利益に反する行為の停止処分の請求 - 区分所有法第57条2項(※3))は、管理組合の総会決議を経て管理組合が原告となれますが、本件原告組合は、区分所有者ら有志で組織された団体にすぎず、区分所有法でいう団体とは異なり、原告組合(※2)の請求(管理室等の明渡し・滞納管理費請求など)は棄却(※4)されました。

争点1について

  被告は、本件管理規約の成立当初から未分譲の区分所有権を所有し、かつ、それを占有していた。昭和57年3月以降も本件マンションの一階に分譲のための事務所を構え、来客の都度未分譲の室に客を案内し、共有のエレベーターや廊下等を使用していたことが認められる。マンションの区分所有者は、分譲業者であっても、未分譲の区分所有権利を所有する以上、共有部分の管理費等を支払わねばならないのは当然である。
また、被告は、分譲業者には管理費等の支払が免除される旨の商慣習があるというが、慣習の存在を認めるに足る証拠はない。

争点2について

1(a)被告は、管理者の義務である、業務および収支状況報告の遅れ、不備ならびに説明の遅延といった対応のずさんさに加え、理由もなく管理費の支払義務がないと独断した態度が区分所有者らの不信を一層募らせた。また、被告所有の駐車場解約をほのめかした、原告組合からの脱退勧誘行為をも考えると、管理者である被告と区分所有原告らを含む多くの区分所有者との信頼関係はもはや無いと評価すべきである。

 (b)被告は、区分所有原告らのうちに被告に対し、管理費等を支払っていない者がいるから、被告の管理費等の不払を理由に解任請求するのは信義則(※5)に反すると主張する。確かに、昭和59年4月以降被告主張の16名の者が被告に対する不信感から管理費等を被告に支払わず、原告組合(※1)が管理するその口座に入金していることが認められるが、それはむしろ被告の管理費等の不払や前記報告及び事後処理のまずさ等に起因するものであるから、区分所有原告らの主張が信義則(※5)に反するとはいえない。

 (c)被告は、不払の理由を本件管理規約の誤解に基づくものというが、区分所有者原告らから昭和58年6月以降に既にその理由の当否を指摘されていたことであり、その点を善処せず、昭和61年12月になってようやく未払管理費等を支払ったのであるから、単なる誤解と片付けることは困難である。
以上要するに、被告には管理者として業務を行うに適しない事情があると解せられる。したがって、区分所有原告らの解任請求は理由がある。

争点3について

1  原告組合(※1)は、本件マンションの区分所有者ら有志で組織された団体に過ぎず、区分所有法にいう団体とは異なる。したがって、区分所有法3条1項(※6)の管理を行うための団体とはいえないから、被告が管理者から解任されたとしても、その後当然に原告組合(※1)が本件マンションの管理者となるものではない。区分所有者全員の集会で、改めて具体的に誰を管理者とするかを決すべきである(本件管理規定29条)。

2  原告らは、被告の解任後、マンションの管理を行う者が不在となるというが、管理者の解任は委任の終了であり、新たに管理者が決まるまでは、被告に管理継続義務がある(区分所有法28条(※7)・民法654条(※8))。 したがって、原告組合(※1)には、今現在被告に対し本件管理室等の明渡し等を求める権利はない。

--- 主 文 ---

1被告を東京都新宿区四谷四丁目二八番二〇マンション「パレ・エテルネル」の管理者から解任する。

2原告パレ・エテルネル管理組合の請求をいずれも棄却(※4)する。

3訴訟費用は、これを二分し、その一を被告の、その余を原告パレ・エテルネル管理組合の負担とする。

東京地方裁判所 平成2年10月26日 管理者解任等請求事件 >>

※1. 区分所有法第25条2項(選任及び解任)
管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる。

※2. 原告組合(訴訟の背景と経緯(※2)で解説)

※3. 区分所有法 第57条2項(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。

※4. 棄却と却下
裁判所が受理した訴訟について、審理の結果、提訴に理由がないとして請求などを退けるのが棄却。訴訟要件や上訴要件が欠けており、不適法であるという理由で、訴えの内容の当否を裁判所が判断することなく、その訴えを退けるのが却下。

※5. 信義則(原告の主張・被告の抗弁 (※2)で解説)

※6. 区分所有法第3条 (区分所有者の団体)
区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行なうための団体を構成
し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部供用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。

※7. 区分所有法第28条 (委任の規定の準用)
この法律及び規約に定めるもののほか、管理者の権利義務は、委任に関する規定に従う。

※8. 民法第654条(委任の終了後の処分) 委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、受任者又はその相続人若しくは法定代理人は、委任者又はその相続人若しくは法定代理人が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない。

この判例による組合の留意点

■ 管理者(理事長)の解任請求と管理組合

今回の判例では、本来管理費を徴収すべき立場の管理者(分譲業者でもあった)が「未分譲マンションは商慣習、管理費は支払わなくてよい。」などとして管理費を滞納したり、受託業務報告や収支状況報告などを行わないなどの、管理業務怠慢でずさんな管理をしていました。そこで区分所有者らが原告となり管理者解任請求を行い、裁判所はその請求を認容しました。

ただ、今回の原告組合(※1)には77.8%の区分所有者が参加しており、総会決議を経て管理者解任は行えていたかもしれません(区分所有法34条5項(※2) 区分所有法第25条1項(※3))。管理費滞納については、被告と一般組合員との間で見解が根本的に相違していたため、裁判所の判断をいずれ待たなければならなかったことが窺われます。原告組合(※1)の管理費支払請求などの訴えは本件で棄却されましたが、訴えの内容はほぼ容認され、組合にとって一定の成果があったといえるかもしれません。
管理組合として法廷技術の選択肢は、区分所有者による理事長解任を優先させるのか、正当性ある管理組合によって執行権までを勝ち取ることに重点を置くのかなど、時間的、費用的要素などを勘案して決定されるべきかもしれません。

参考判例解説ページ >>『理事長の責任追及および訴訟の当事者適格』

※1. 原告組合(訴訟の背景と経緯(※2)で解説)

※2 区分所有法第34条5項(集会の招集)
管理者がないときは、区分所有者の五分の一以上で議決権の5分の1以上を有するものは、集会を招集することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。

※3. 区分所有法第25条1項(選任及び解任)
区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる。

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