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建替え決議における複数戸所有する区分所有者数の議決権数

事件名:建替決議無効確認請求、所有権移転登記等請求事件

裁判所:神戸地方裁判所

判決日 : 平成13年1月31日

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マンション名:東山コーポ    
事件番号 平成9年(ワ)第1842号、平成10年(ワ)第115号、平成10年(ワ)第736号 事件名 建替決議無効確認請求、所有権移転登記等請求事件

裁判所

神戸地方裁判所 判決日 平成13年1月31日
掲載文献

判例時報1757号123頁

判示事項

阪神・淡路大震災によって損傷を受けたマンションの区分所有者の集会における立替決議が、複数の区分所権を有する者が複数人として数えられて決議されており、区分所の五分の四以上の賛成がないことして無効とされた事例

第一審 hanrei 神戸地方裁判所 平成13年1月31日 建替決議無効確認請求事件
参照条文

区分所有法第62条※1

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訴訟の背景と経緯

兵庫県神戸市で昭和43年に分譲された13階建てのマンションです。1階から3階までは神戸市が水道局事務所として使用し、4階以上が住居として90戸分譲されていました。

平成7年1月の阪神・淡路大震災で損傷し、建替えるか補修するかで議論なり、平成9年9月14日の管理組合の臨時総会において、マンションの建替え決議を行いました。
臨時総会では賛成73票(賛成した複数住戸所有者の議決権数を戸数分で算定)と区分所有法第62条※1で必要な5分の4以上の定足数で建替えが可決しました。

反対票を投じた16名のうち10名の区分所有者グループAが、議決権の算定方法に異論があるとして「決議の無効確認請求」を提訴しました。これに対し、建替えに参加する区分所有者グループBは、区分所有法第64条4項※2に基づき「区分所有権等の売渡請求」「移転登記手続き請求」で反訴し、両控訴が併合審理※3されることになりました。

○住居分90戸のうち複数所有者が2名

実質所有者と登記上名義が違い複数所有(2名とも建替えに賛成票を投じた) 議決権数

区分所有者@

3戸所有

単独所有

(登記上名義

区分所有者@)

区分所有者@と

実母の共有

(登記上名義

区分所有者@)

実母実質所有

(登記上名義

区分所有者@)

戸数=3票

実質所有=2票

登記簿名義数=1票

区分所有者A

2戸所有

単独所有

(登記上名義

区分所有者A)

長女夫婦実質所有

(登記上名義

区分所有者A)

戸数=2票

実質所有=2票

登記簿名義数=1票

 

○議決権数算定方法

戸数=議決権数

の場合

総数

91票

(※90票)

91 x 4/5 = 可決定足数73以上

(※90 x 4/5 = 可決定足数72以上)

賛成:73票 反対:16票 棄権:2票

(※賛成:72票 反対:16票 棄権:2票)

実所有者数=議決権数

の場合

総数

89票

(※88票)

89 x 4/5 = 可決定足数72以上

(※88 x 4/5 = 可決定足数71以上)

賛成:71票 反対:16票 棄権:2票

(※賛成:70票 反対:16票 棄権:2票)

登記簿上名義数=議決権数

の場合

総数

88票

(※87票)

88 x 4/5 = 可決定足数71以上

(※87 x 4/5 = 可決定足数70以上)

賛成:70票 反対:16票 棄権:2票

(※賛成:69票 反対:16票 棄権:2票)

※括弧内は神戸市水道局の票を含まない場合

 

※1 区分所有法第62条(建替え決議)

1.集会においては、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という。)をすることができる。

2.建替え決議においては、次の事項を定めなければならない。
一 新たに建築する建物(以下この項において「再建建物」という。)の設計の概要
二 建物の取壊し及び再建建物の建築に要する費用の概算額
三 前号に規定する費用の分担に関する事項
四 再建建物の区分所有権の帰属に関する事項

3.前項第三号及び第四号の事項は、各区分所有者の衡平を害しないように定めなければならない。

4.第一項に規定する決議事項を会議の目的とする集会を招集するときは、第三十五条第一項の通知は、同項の規定にかかわらず、当該集会の会日より少なくとも二月前に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸長することができる。

5.前項に規定する場合において、第三十五条第一項の通知をするときは、同条第五項に規定する議案の要領のほか、次の事項をも通知しなければならない。
一 建替えを必要とする理由
二 建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用の額及びその内訳
三 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
四 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額

6.第四項の集会を招集した者は、当該集会の会日より少なくとも一月前までに、当該招集の際に通知すべき事項について区分所有者に対し説明を行うための説明会を開催しなければならない。

7.第三十五条第一項から第四項まで及び第三十六条の規定は、前項の説明会の開催について準用する。この場合において、第三十五条第一項ただし書中「伸縮する」とあるのは、「伸長する」と読み替えるものとする。

8.前条第六項の規定は、建替え決議をした集会の議事録について準用する。

※2 区分所有法第64条(建替えに関する合意)
建替え決議に賛成した各区分所有者、建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者及び区分所有権又は敷地利用権を買い受けた各買受指定者(これらの者の承継人を含む。)は、建替え決議の内容により建替えを行う旨の合意をしたものとみなす。

※3 併合審理
当事者の双方又は一方が同一である二以上の審判について、同一の審判手続きによって審理すること。今回の管理組合の別グループからの訴えは「決議の無効確認請求」を審議することに還元されます。また、併合審理されない場合は裁判所の判断が分かれるおそれがあります。

原告の主張(区分所有者10名)

●臨時総会での建替え決議は無効である。

●臨時総会での議決権数の算定方法に異議を唱えた。

●複数戸所有の区分所有者も議決権数は1票である。

●議決権が登記簿に記載された区分所有者一人に対して議決権を一票とすると、建替え決議は可決定足数に足らず無効である。

被告の抗弁(区分所有者B)

●建替え決議の意思決定には、財産権としての面から持分による意見を反映させなければならない。よって複数住戸を所有している区分所有者が複数議決権を行使しても問題はない。(区分所有法第62条※1の建替え決議5分の4以上を満たしている。)

●建替えに参加しないなら所有権移転登記と明渡しを求める。(区分所有法第64条※2 建替えに関する合意)

争点

・既に可決された議案に対して、建替え決議無効確認を求める訴えはできるのか?

・住居を複数所有している区分所有者は、複数の議決権があるのか?

・登記簿上の区分所有者が議決権・投票権所有者か?実質的な権利関係にあるものが議決権・投票権所有者か?

裁判所の判断と判決

・一人の区分所有者が複数の専用部分を所有している場合でも、区分所有者としての定数は一人と計算するのが相当である。

・区分所有者Bらが提起する所有権移転登記請求等の複数の訴えが併合審理される保障はなく、判断が分かれるおそれがある。したがって、売渡請求の基になる建替決議自体の効力を独立して確定する意味があるから、訴えは適法である。

・建物の区分所有関係における意思決定に、財産権としての面から各区分所有者の有する区分所有権の大きさ、すなわち持分による多数の意見で決めるだけでなく、一つの管理共同体としての面からその構成員である区分所有者の数による多数の意見を反映させなければならないとの考慮に基づくものである。したがって、1人の区分所有者が複数の専有部分を所有している場合でも区分所有者としての議決権は1票と解するのが相当である。

・管理組合が誰に集会招集通知を発し、議決権の行使をさせるかを決する基準として、登記簿上の記載によるのか、それとも実質的な権利関係によるものかであるが、仮に。実質的な権利関係を基準にしなければならないとすると、管理組合が実質上の所有者が誰かを調査しなければならず、管理組合に過度の負担を強いている可能性がある。
また、採決に参加した者が事実の区分所有者でなかったと後になって主張することが許され、ときに採決の結果が覆されることになり、法廷安定性が損なわれるので、画一的で明確性のある登記簿上の記載によるとするのが相当である。

--- 主 文---

1.平成九年九月一四日開催の第一及び第二事件被告の臨時総会において議決された別紙不動産目録に記載の建物を建て替える旨の決議が無効であることを確認する。

2.第三事件各原告の第三事件各被告に対する請求をいずれも棄却する。

3.訴訟費用は、第一事件ないし第三事件を通じ、第一及び第二事件被告並びに第三事件原告らの負担とする。

平成13年1月31日 神戸地方裁判所 建替決議無効確認請求事件 >>

この判例による組合の留意点

マンションの総会において議決には、区分所有法などで決まった定足数の「議決権数(各持分、またはその有する専有部分の床面積の割合)」と「区分所有者数(登記簿上の所有者。区分所有者1人1票)」の両方を満たさなければいけません。

今回の判例では、マンション建替え決議の際に、議決権数では定足数を満たしていましたが、区分所有者数では定足数を満たしていませんでした。区分所有法第62条1項※1 よると「区分所有者及び議決権の各4/5以上の多数」とされています。

・議決権数=各持分、またはその有する専有部分の床面積の割合※2

・区分所有者数=登記簿上の所有者。区分所有者1人1票

 

●マンション管理組合総会における各議案の定足数について

総会成立 普通決議

議決権数の

1/2以上

総会出席者の

1/2以上※3

※3 マンション標準管理規約では出席者の1/2以上となっていますが、区分所有法によると普通決議の定足数は区分所有者数および議決権数の1/2以上となっています。ただし、「法律または規約に別段の定めがない限り」となっており、普通決議の定足数はマンションの状況に応じて、マンション管理規約で別段の定めをすることができます。

 

特別決議 特別決議(建物の建替えの場合) 特別決議(団地一括建替え)

区分所有者および議決権数

3/4以上

区分所有者および議決権数

4/5以上

区分所有者および議決権数

4/5以上※4

※4 ただし、各建物ごとに、その区分所有者および議決権の2/3以上の賛成がともに必要になります。

 

●総会における議決権の取扱の適正化

議決権行使や委任状は、さもすれば理事長一任となり適正な決議ができない場合があります。
国土交通省は平成23年7月27日マンション標準管理規約・改正のポイントとして「総会における議決権の取扱いの適正化」を指示しています。


@ 議決権行使書・委任状の取扱いの整理
・議決権行使および委任状の取扱のルールを明確化する。

・管理組合員の意思を総会に直接反映させる観点から、委任状(白紙委任状)よりも議決権行使書によって組合員本人が自らの賛否意思表示をすることが望ましい。そのためには総会の議案の内容をあらかじめ明確に管理組合員に提示することが重要になります。

・白紙委任状が多用されないように、委任状の様式等において「誰を代理人とするかについて主体的に決定することが必要であること」「適当な代理人がいない場合は代理人欄を空欄とせず、議決権行使書によって自ら賛否意思表示すること」が必要である旨を記載しておく必要があります。

 

A委任状による代理人の範囲

 マンション標準管理規約第46条5項※5 より「その代理人は、その組合員と同居する者若しくはその組合員の住戸を借り受けた者、又は他の組合員若しくはその組合員と同居する者でなければならない。」としており、委任状の様式において「代理人の範囲は、区分所有者の立場から利害関係が一致すると考えられる者に限定することが望ましいこと等」を記載しておく必要があります。

 

※2 区分所有法における議決権の考え方について

・区分所有法第14条(共用部分の持分の割合)

1.各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。

2.前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。

3.前二項の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。

4.前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。

・区分所有法第38条(議決権)
各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第十四条に定める割合による。

 

※5 マンション標準管理規約第46条5項
組合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、その代理人は、その組合員と同居する者若しくはその組合員の住戸を借り受けた者、又は他の組合員若しくはその組合員と同居する者でなければならない。

 

 

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