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マンションの区分所有者が拠出した管理費や修繕積立金を原資とする銀行預託金と預金債権の帰属

事件名 : 預託金返還請求事件
裁判所 : 東京地方裁判所
判決日 : 平成15年1月30日

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マンション名:日興パレス伊勢佐木町北PARTII    
事件番号 平成14年(ワ)第14614号 事件名 預託金返還請求事件

裁判所

東京地方裁判所 判決日 平成15年1月30日
掲載文献

金融・商事判例1171号41頁 | 金融法務事情1696号90頁

判示事項

マンションの区分所有者が拠出した管理費や修繕積立金を原資とする銀行預託金と預金債権の帰属

判決要旨

マンションの分譲以来、個々の区分所有者が管理業者と管理委託契約を締結し、管理が行われてきたところ、区分所有者の総会が開催され、管理組合が設立され、理事長等の役員も選任されたが、管理規約については、適法な決議がされなかったものの、それ以前から使用されてきた規約が管理組合の規約として使用され、管理組合の運営が行われ、理事長も預金契約の締結等につき代表者として行動していたものであり、本件管理組合は、適法かつ有効に設立され、運営されているものと認めるのが相当である。

第一審 hanrei 東京地方裁判所 平成15年1月30日 預託金返還請求事件
参照条文

民法第666条※1 区分所有法第3条※2 ・第34条 第25条※4

引用判例

最高裁判所第2小法廷 平成15年2月21日 預金返還、仮執行の原状回復及び損害賠償請求事件
東京高等裁判所 平成12年12月14日 預金返還請求・各当事者参加控訴事件
東京高等裁判所 平成11年8月31日 預金返還請求・各当事者参加控訴事件
東京地方裁判所 平成10年1月23日 預金返還請求事件、当事者参加事件、当事者参加事件
東京地方裁判所 平成8年5月10日 預金返還請求、当事者参加事件
東京地方裁判所 平成6年10月28日 損害賠償請求事件
最高裁判所第1小法廷 昭和39年10月15日 建物収去土地明渡請求事件

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訴訟の背景と経緯

神奈川県横浜市に平成元年に日本興和株式会社によって建築、分譲された総戸数61戸/地上11階建ての投資型マンションです。『日興パレス伊勢佐木町北PARTII』は分譲時から平成12年まで管理組合が機能しないままに、本件管理規約によって、売主の日本興和株式会社の系列会社である興和管理株式会社が各区分所有者と管理委託契約を締結し、管理を行っていました。

平成14年6月、管理組合(興和管理株式会社が理事長(※1))が原告となり、被告の銀行に対して、銀行預託金と預金債権の返還を求め提訴しました。

銀行は「管理組合は存在せず、原告は当事者適格を欠く」「新役員を選任した総会には瑕疵がある」「本件預金の名義人は『日興パレス伊勢佐木町北PARTII理事長A(※2)』であり、原告は、『日興パレス伊勢佐木町北PARTII管理組合』という管理組合であり、本件預金の債権者とは認められない」として、支払に応じませんでした。

裁判所は、原告代表者は適法に選任された原告管理組合理事長であると認められること、原告管理組合に帰属する預金として本件預金契約が締結されたことは明らかであるとして、原告の本件預金返還請求を認容しました。

※1. 興和管理株式会社は、平成12年1月19日に定期総会を開くため、区分所有者全員に対し、管理組合の初めての定期総会(創立総会)を開催すること、第10期収支事業の報告、修繕積立金制度の導入についての討議、第11期収支予算案・事業計画、管理組合理事長および役員選任を議題とすることなどの通知を送付しました。

※2. 平成12年1月19日に開催された本件マンションの総会は、有効議決戸数36(内出席戸数4)で定足数を満たし、Aが議長に選任された上、原告管理組合成立が決議されました。管理組合役員としてAが理事長、Bが副理事長、他2名が理事に選任されました。理事長Aは、平成12年3月2日、第10期収支報告書に記載されていた剰余金を本件マンションの修繕積立金に充当するためとして、被告横浜中央支店に『日興パレス伊勢佐木町北PARTII理事長A』名義で原告管理組合の口座を開設し、同月9日に1500万円を本件預金に預け入れた。

その後、理事長Aと管理会社である興和管理株式会社との間で、管理委託契約に関して紛争が生じました。

平成12年6月24日に開催された臨時総会において管理会社変更の作業を進めることが承認可決されたと議事録に記載されました。これに対し、議事録の記載は不実であると主張し、日本興和株式会社1名を含む26名(本件管理規約第17条(※3)に則り区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上)は、日本興和株式会社を代表として理事長Aに対し、理事長解任を求め、以下の内容で臨時総会招集の内容証明を送付しました。
1. 同年6月24日臨時総会の議事録の訂正。
2. 理事長、副理事長の解任。
3. 管理組合新役員の選任を議題とする臨時総会の招集を請求する(※4)

理事長Aが臨時総会を招集しなかったので、平成12年10月4日、26名の区分所有者は、他の2名の区分所有者を加えた上、日本興和株式会社を代表として、上記3議題につき臨時総会を開催する旨の通知を、日本興和株式会社自身を除く、各区分所有者54名に送付した。(本件マンションは総戸数61戸であるが、内6名が各2戸を所有しているため、区分所有者の人数としては55名)

平成12年10月15日、本件臨時総会が有効議決戸数34(内出席戸数8)として開催され、本件管理規約第22条により日本興和株式会社が議長となって、理事長Aおよび副理事長Bを解任すること、日本興和株式会社を理事長に選任すること、その他2名の区分所有者を理事に選任することの決議が全員一致で可決されました。

平成14年6月1日、原告管理組合総会において(有効議決数36)、理事長である日本興和株式会社が本件訴訟を提起することが承認されました。

※3. 本件管理規約第17条
管理者又は区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有する者は管理者に対し、会議の目的たる事項を示して集会の招集を請求することができる。

※4. 総会の招集、理事長解任
区分所有法第34条(集会の招集)

1. 集会は、管理者が招集する。
2. 管理者は、少なくとも毎年一回集会を招集しなければならない。
3. 区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。
4. 前項の規定による請求がされた場合において、二週間以内にその請求の日から四週間以内の日を会日とする集会の招集の通知が発せられなかつたときは、その請求をした区分所有者は、集会を招集することができる。
5. 管理者がないときは、区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、集会を招集することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。

区分所有法第25条(選任および解任 )

1.区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる。

2.管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる。

被告の主張(組合預託銀行)

1. 区分所有者による管理組合の設立があったとは認められず、本件管理規約によれば、むしろ管理組合は成立されておらず原告は当事者適格を欠く。

 

2. 平成12年10月15日に開催された臨時総会(※2)の通知は元理事長Aおよび副理事長Bには送付されておらず、招集手続に重大な瑕疵があるから、同総会における決議は無効である。

 

3. 本件預金の名義人は『日興パレス伊勢佐木町北PARTII理事長A』であり、原告は、『日興パレス伊勢佐木町北PARTII管理組合』という管理組合であり、本件預金の債権者とは認められない。

 

 

 

 

 

 

 


原告の主張(管理組合)

1. 平成12年1月19日、区分所有者総戸数61戸のうち有効戸数36戸(内出席戸数4戸)として、定期総会が開催され、全員一致で原告管理組合を設立することが可決された。そして、理事長にA、副理事長にB、理事にCおよび日本興和株式会社がそれぞれ選任された。(その他、収支・事業の報告、修繕積立金制度の導入についての討議、次年度の支予算案・事業計画について討議された。)

2. 臨時総会の招集は、日本興和株式会社を含む26名の区分所有者が臨時総会の招集を請求したもので、同請求は本件管理規約第17条(※3)を満たし、正当な招集手続きである。

・臨時総会の招集通知は区分所有者全員へ郵送にて通知を行った。理事長Aに対しても送付し、副理事長Bについては、マンションの所有名義が妻のDであるから、同人宛で通知を送付した。

3. 理事長Aは、平成12年3月9日当時の原告管理組合の代表者たる理事長として、管理費や修繕積立金を保管するため、被告銀行と本件預金契約を締結したものであり、原告管理組合が、本件預金債権の債権者である。

争点

・原告が本件マンションの管理組合であるか。

・正当な招集権者によって平成12年10月15日開催の原告管理組合の臨時総会の招集手続が行われたか。

・本件臨時総会開催の通知が区分所有者全員に送付されたか。

・原告が本件預金債権の債権者であるか否か。

裁判所の判断と判決

・本訴訟は、銀行に預託した管理組合と、その預託金を払い戻そうとした管理組合を法的に同定するために問われたものです。同定するための要件として、管理規約の存在とその規約に基づく適法な手続きが切れ目のない因果関係で結ばれていることが必要でした。
分譲時から、創立総会の開催、理事長の選任・解任、新理事長の選任までを以下に記述します。

●分譲時の原始規約(本件管理規約)には「管理者選任までの間、管理者の業務を本件建物の売主が指定する管理業務受託者に委任することができる」とあり、それに則り、分譲時から12年後、管理会社が招集者となり創立総会が開催され、原告管理組合設立が決議、理事長A他が選任された。
理事長Aは原告管理組合の代表として行動していたが、管理会社との関係悪化や管理組合内部の紛争により、解任を求められた。

●理事長Aの解任、および新役員の選任のための臨時総会は、全区分所有者の5分の1以上の定足数を満たす区分所有者26名(日本興和株式会社を含む)により、本件管理規約第17条(※1)・18条(※2)に基づき、正当な招集権者によって臨時総会開催通知が区分所有者全員に送付され、開催された。その総会で、理事長Aの解任、および新役員の選任が行われた。

●本件預金の口座名義人は「日興パレス伊勢佐木町北PARTII理事長A」と記載されているが、理事長Aが、原告管理組合の理事長として、原告管理組合に帰属する預金とする趣旨で本件預金契約を締結したことは明らかである。
したがって、原告は本件預金の返還請求権を有するものというべきである。

--- 主 文---

1.被告は、原告に対し、金1500万円およびこれに対する平成14年7月16日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

2.訴訟費用は、被告の負担とする。

3.この判決は、仮に執行する(※3)ことができる。

東京地方裁判所 平成15年1月30日 預託金返還請求事件>>

※1. 本件管理規約第17条
管理者又は区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有する者は管理者に対し、会議の目的たる事項を示して集会の招集を請求することができる。

※2. 本件管理規約第18条
集会を招集するには、原則として7日前までに会議の目的事項を示して各区分所有者に通知するものとする。

※3. 仮に執行する
判決の確定前に仮執行の宣言に基づいてなす強制執行。

この判例による組合の留意点

本件のマンション管理組合の理事長は、この投資型マンションの管理会社であり区分所有者でもありました。管理組合が原告となり、銀行に対して銀行預託金支払請求を提訴し、勝訴した事例です。このことによって管理会社の手続きに法的瑕疵がなかったことが証明されました。

しかし、12年間創立総会が招集されず、その間、収支報告や事業報告が適切に行われていたかどうかも疑わしいといえます。

管理組合が機能していない投資型マンションや、リゾートマンションでは、不適切な管理会社を適法に解約しようとしても一般組合員にとってハードルがかなり高い場合があります。

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