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建替え決議と"形成権"としての売渡請求

事件名:建物所有権移転登記手続等請求事件

裁判所:東京地方裁判所

判決日:平成16年7月13日

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マンション名: 代官山パンション    
事件番号 平成15年(ワ)第29689号 事件名 建物所有権移転登記手続等請求事件

裁判所

東京地方裁判所 判決日 平成16年7月13日
掲載文献

金融法務事情1737号42頁

判示事項

マンションの建替決議に賛成した区分所有者から建替えに参加しない旨を回答したものとみなされた区分所有者に対して区分所有権および敷地利用権の売渡請求がされた場合について、建替えに参加しない旨を回答したものとみなされた区分所有者には、区分所有建物から借家人を退去させた上で同建物を引き渡す義務敷地利用権の譲渡について地主の承諾を得る義務があるとされた事例

判決要旨

建物の売買における売主の引渡義務には、借家人を立ち退かせることも含まれ、このことは建物の区分所有等に関する法律63条4項の売渡請求権行使により売買契約が成立した場合であっても異ならない。また、借地権の売買においては、地主の承諾が地主に対する対抗要件となるから、売主は、地主の承諾を得る義務を負い、このことは同項の売渡請求権行使により売買契約が成立した場合であっても異ならない。

第一審 hanrei 東京地方裁判所 平成16年7月13日 建物所有権移転登記手続等請求事件
参照条文

区分所有法第63条(※1)

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訴訟の背景と経緯

東京都渋谷区に昭和39年分譲された地上6階/地下1階のマンションです。
マンションの老朽化のため管理組合は平成14年7月27日に総会を開き、マンションの建替え決議を行い、理事長Aは建替えに賛成し、区分所有者Bは反対しました。

理事長Aは区分所有者Bに対し区分所有法第63条4項(※1)に基づき「専有部分の所有権移転登記手続き」「賃借人Dを退去させた上での専有部分の引渡」「地主Cの承諾を受けた上での敷地利用権譲渡」を提訴しました。
本件マンションの敷地は地主Cが所有しており、各区分所有者は敷地を賃借していました。
区分所有者Bの専有部分は、賃借人D(有限会社)に賃貸していました。

平成14年7月27日の総会において建替えに反対した区分所有者Bに対し、理事長Aは区分所有法第63条1項(※2) に基づき、建替えに参加するか否かを回答する旨の書面を平成14年7月29日に出し、同月30日に区分所有者Bの元へ到達しました。
これに対して区分所有者Bは、同月30日から2カ月以内に回答しませんでした。
理事長Aは区分所有者Bに対し、区分所有法第63条4項(※1)に基づき、区分所有権等を時価で売り渡すよう、書面で平成14年10月28日に出し、同月29日に区分所有者Bの元へ到達しました。

区分所有法第63条4項(※1)売渡請求権は形成権(※3) にあたります。書面が区分所有者Bの元へ届いた時点で、相手方の区分所有権および敷地利用権を時価によって売買契約が成立します。

そこで理事長Aは上記のような訴えを起こしました。

※1. 区分所有法第63条4項(区分所有権等の売渡し請求等)
第二項の期間が経過したときは、建替え決議に賛成した各区分所有者若しくは建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)又はこれらの者の全員の合意により区分所有権及び敷地利用権を買い受けることができる者として指定された者(以下「買受指定者」という。)は、同項の期間の満了の日から二月以内に、建替えに参加しない旨を回答した区分所有者(その承継人を含む。)に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。建替え決議があつた後にこの区分所有者から敷地利用権のみを取得した者(その承継人を含む。)の敷地利用権についても、同様とする。

 

※2. 区分所有法第63条1項(区分所有権等の売渡し請求等)
建替え決議があったときは、集会を招集した者は、遅滞なく、建替え決議に賛成しなかつた区分所有者(その承継人を含む。)に対し、建替え決議の内容により建替えに参加するか否かを回答すべき旨を書面で催告しなければならない。

 

※3. 形成権
形成権とは、単独の意思表示のみによって法律効果を生じさせることのできる権利です。
今回のケースでは、売渡請求権が区分所有者Bの元へ届いた時点で、時価による区分所有権および敷地利用権の売買契約が成立します。

原告の主張(理事長A)

●区分所有法第63条4項(※1) に基づき
「専有部分の所有権移転登記手続き」 「賃借人Dを退去させた上での専有部分の引渡」 「地主Cの承諾を受けた上での敷地利用権譲渡」 を請求する。

 

 

被告の抗弁(区分所有者B)

●売渡請求権の行使は、財産である建物区分所有権の処分を強制するものであり憲法第29条(※4)の財産権に反する。

●本物件から賃借人Dを退去させる義務はない。

●地主の承諾を得る義務は、本来訴えた理事長Aがやるべきで、かつ間接強制できないから「敷地利用権譲渡」は請求できない。

※4. 憲法29条

1.財産権は、これを侵してはならない。

2.財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。

3.私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。

争点

・区分所有法第63条4項(※1)に基づき売渡請求がされた場合、その請求の相手方となった区分所有者Bは賃借人を退去させ引渡す義務、敷地利用権の譲渡につき敷地所有者の承諾を得る義務があるのか?

裁判所の判断と判決

・理事長Aが請求した「専有部分の所有権移転登記手続き」「賃借人Dを退去させた上での専有部分の引渡」「地主Cの承諾を受けた上での敷地利用権譲渡」を肯定し、認容する。

・区分所有法第63条4項(※1)の売渡請求権は形成権(※3) であるから、その行使の意思表示が相手方に到達すると直ちに、相手方の区分所有権および敷地利用権を目的とする時価による売買契約が成立する。
そして、売買契約の効果として、区分所有権および敷地利用権が相手方から請求権行使者に移転し、相手方は、専有部分の引渡義務及びその登記移転義務を負い、請求権行使者は、時価による売買代金支払義務を負い、この両者の義務は同時履行の関係に立つ。
したがって、区分所有者Bは、本件建物の引渡義務及びその登記移転義務を負い、理事長Aは、本件建物の時価による売買代金支払義務を負う。

・本件建物の売渡請求の時点における時価については1000万円と認められる。

・区分所有者Bは、本件建物を賃借人Cに賃貸しているが、建物の売買における売主の引渡し義務には、借家人を立ち退かせることも含まれると解され、このことは区分所有法63条4項の売渡請求権行使により売買契約が成立した場合であっても異ならないと解されるから、区分所有者Bは本件建物から賃借人Cを退去させる義務を負うものと認められる。

・借地権の売買においては、地主の承諾が、地主に対する対抗要件となるから、売主は、地主の承諾を得る義務を負うと解され、このことは区分所有法63条4項の売渡請求権行使により売買契約が成立した場合であっても異ならないと解されるから、区分所有者Bは、本件土地賃借権の譲渡につき、地主Dの承諾を得る義務を負うものと認められる。区分所有者Bは、地主の承諾を得る義務が不代替的作為義務であり、かつ、間接強制が許されないものであるから、給付請求自体が否定される旨主張するが、そのように解すべき根拠はない。

--- 主 文---

1.被告は、原告に対し、原告から一〇〇〇万円の支払いを受けるのと引換えに、
(1) 別紙物件目録《略》2記載の建物につき、平成一四年一〇月二九日売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ。
(2) 別紙物件目録2記載の建物を有限会社ルビコンを退去させて引き渡せ。
(3) 別紙物件目録1記載の土地賃借権を福昌寺の承諾を得たうえで譲り渡せ。
2.訴訟費用は、被告の負担とする。

この判例による組合の留意点

本件では当事者である地主Cや賃借人Dは訴外者でした。賃借人Dに対しては、区分所有者Bとの間で退去手続きが行われることになります。地主が譲渡又は転貸を承諾しない場合は、借地借家法第19条(※5)の手続きを利用することが可能になります。

※5. 借地借家法第19条(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)

1.借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。

2.裁判所は、前項の裁判をするには、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。

3.第1項の申立てがあった場合において、裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。

4.前項の申立ては、第1項の申立てが取り下げられたとき、又は不適法として却下されたときは、その効力を失う。

5.第3項の裁判があった後は、第1項又は第3項の申立ては、当事者の合意がある場合でなければ取り下げることができない。

6.裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第1項又は第3項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。

7.前各項の規定は、転借地権が設定されている場合における転借地権者と借地権設定者との間について準用する。ただし、借地権設定者が第3項の申立てをするには、借地権者の承諾を得なければならない。

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