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専用使用権の消滅・有償化について

事件名:管理費等請求事件

裁判所:最高裁判所第2小法廷

判決日:平成10年11月20日

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マンション名: 高島平マンション    
事件番号 平成8年(オ)第1362号 事件名 管理費等請求事件

裁判所

最高裁判所第2小法廷 判決日 平成10年11月20日
掲載文献

最高裁判所裁判集民事190号291頁|裁判所時報1232号288頁|判例タイムズ991号121頁|判例時報1663号102頁|金融法務事情1541号65頁

判示事項

区分所有者の有する無償の専用使用権の一部を消滅させ残りを有償にする旨の規約の変更が、当該区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすとして、その承諾なくしてされた規約の変更が無効であるとされた事例

判決要旨

1.区分所有者の有するマンション駐車場の一部の専用使用権を消滅させるとの集会決議が右区分所有者の承諾のないままされた場合において、右区分所有者が、分譲当初からマンションの1階店舗部分においてサウナ、理髪店等を営業しており、来客用及び自家用のために駐車場の専用使用権を取得したものであって、残った駐車場だけではその営業活動を継続するのに支障を生ずる可能性がないではなく、他の区分所有者は、同人らのための駐車場及び自転車置場がないことを前提としてマンションを購入したものであるなど判示の事実関係の下においては、右集会決議は、建物の区分所有等に関する法律31条1項後段(※1)の規定の類推適用により、効力を有しない。

2.区分所有者の有するマンション駐車場等の専用使用権を有償化するとの集会決議が右区分所有者の承諾のないままされた場合において、右区分所有者が管理費等をもって相応の経済的な負担をしてきた権利を更に有償化して使用料を徴収することは右区分所有者に不利益を与えるというのみから、集会決議により設定された使用料の額が社会通念上相当なものか否か等について検討することなく、右集会決議を無効であるとした原審の判断には、建物の区分所有等に関する法律31条1項後段(※1)にいう「特別の影響」の有無について、法令の解釈適用の誤り、審理不尽の違法がある。

第一審 hanrei 東京地方裁判所 平成6年3月24日 管理費等請求事件
控訴審 hanrei 東京高等裁判所 平成8年2月20日 管理費等請求控訴事件
上告審 hanrei 最高裁判所第2小法廷 平成10年11月20日 管理費等請求事件

差戻し

hanrei 東京高等裁判所 平成13年1月30日 管理費等請求控訴事件
参照条文

区分所有法第17条(※2)・第18条(※3)・第21条(※3)・第31条1項(※1)

区分所有法第1章第2節(※5)

引用判例

東京高等裁判所 平成8年2月20日 管理費等請求控訴事件  
東京地方裁判所 平成6年3月24日 管理費等請求事件  
東京高等裁判所 昭和59年11月29日 管理費用等請求控訴同附帯控訴事件  
東京地方裁判所 昭和58年8月24日 管理費用等請求事件

被引用判例:

東京高等裁判所 平成11年7月27日 破棄自判・上告

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訴訟の背景と経緯

高島平マンションは、昭和48年分譲の8階建て34戸のマンションです。

管理組合が原告となり分譲業者に対して「消滅決議で決定した部分の利用停止、有償化決議で決定した部分の利用料金の支払」という訴えを起こしました。

このマンションは、1階部分が店舗、2階以上が住居と店舗になっています。分譲後も分譲会社が1階部分の店舗と2階部分の住居を2戸、所有していました。そして敷地内に8台分の駐車場を店舗の来客用駐車場として無償で所有していました。なお、このマンションには、他に駐車場はありません。

このほか分譲会社は屋上に高さ2.5m、幅5.5mの看板、側壁にも高さ8m、幅0.8mの看板を無償で設置、敷地北側の空地部分にコインランドリー用水槽(140×95×160cm)、ポンプ(41×69×80cm)、ボイラー(60×60×116cm)、クーリングタワー(直径110×110cmの円筒型)、石油タンク(70×80×84cm)を無償で設置していました。このマンション敷地の空きスペースは分譲業者により使用されており、その他の区分所有者の駐車場や駐輪場、また、管理用自動車、緊急自動車の駐車スペースも無い状況でした。また、マンションの管理は分譲業者が分譲当時からおこなっていました。

昭和52年、分譲業者が所有する1階店舗部分の管理費を払っていないことから、昭和53年に区分所有者らが結束して管理費等の支払をめぐる訴訟を起こしています。
この訴訟は最高裁まで争われました(東京高裁 昭和59年11月29日判決)。訴訟が決着した後、平成元年に分譲会社も加えて正式に管理組合が設立されました。

 

平成4年10月18日開催の平成4年度定期総会において分譲業者が所有している専用使用権について
・南西側駐車場についての専用使用権は、平成4年12月31日をもって消減させる(消滅決議)

・その他の専用使用権については、平成5年1月以降、専用使用料として、南側駐車場につき月額10万円、塔屋外壁につき月額4万円、屋上につき月額1万円、2階屋上につき月額2万円、非常階段踊り場につき月額1万5,000 円を、毎月25日限り翌月分を上告人に支払う(有償化決議)決議をしました。

 

 

●「区分所有者の権利について特別な影響が及ぶときの」意義について

「規約の設定・変更の必要性と合理性」と、「一部の区分所有者の受ける不利益」とをよく考察し、受忍すべき限度を超えられると認められる場合を「区分所有者の権利について特別な影響が及ぶとき」とする、という判断が示されました。

原告の主張(管理組合)

●総会で決議した専用使用権消滅にともない、専用使用権部分の使用停止請求(第一審 認容 第二審 棄却 最高裁 棄却)

●総会で決議した専用使用権の有償化にともない専用使用権部分の利用料金請求(第一審 認容、第二審 棄却 最高裁 認容)

被告の抗弁(分譲会社)

●区分所有者は、分譲時に駐車場や駐輪場がないことを了解して購入している。

●総会での決議に対して、区分所有者として承認していないので、専用使用権の消滅・有償化は認められないし、請求には応じられない。

 

争点

・無料であった専用使用権を総会決議を経て消滅・有償化する規約の変更は、専用使用権者に不利益とする「特別な影響をおよぼす」にあたるか?

・経済的な負担のもと認められてきた権利について、さらにこれを有償とし利用料金を徴収することが控訴人に不利益を与えることになか?

・有償化は一般の区分所有者と専用使用権者である被告の利益の合理的な調整を図る上で必要性と合理性があるか?

・被控訴人の主張する区分所有者の必要性が、商業活動上駐車場を必要とする控訴人の利益を上回るのか?

・設定された使用料の額が社会通念上相当なものか?

裁判所の判断と判決

・専用使用権は一定の手続きをもって与えられた権利であるなら、妥当性があり、一方的に消滅させることはできない。

・専用使用権の消滅について、被告である分譲業者(区分所有者でもある)は1階部分において店舗営業をしており商業活動上駐車場を必要としていて、専用使用権を消滅することによって店舗営業に支障を生ずる可能性ある。一方、被上告人以外の区分所有者は、駐車場及び自転車置場がないことを前提として本件マンションを購入したものであること等を考慮すると、被上告人が駐車場の専用使用権を消滅させられることにより受ける不利益は、その受忍すべき限度を超えるものと認めるべきである。よって専用使用権の消滅は無効である。

・専用使用権の有償化は、一般的に専用使用権者に不利益を及ぼすものであるが、有償化の必要性および合理性が認められ、その金額が社会通念上相当な額であると認められる場合には、専用使用権の有償化を受忍すべきである。

--- 主 文 ---

1.原判決中、上告人の敗訴部分のうち、上告人が被上告人に対し専
用使用料として平成四年一二月から毎月二五日限り一八万五〇〇〇円及びこれに対
する各月二六日から各支払済みまで年五分の割合による金員の支払を求める請求に
関する部分を破棄する。

2.前項の部分につき、本件を東京高等裁判所に差し戻す。

3.上告人のその余の上告を棄却する。

4.前項の部分に関する上告費用は上告人の負担とする。

 

平成10年11月20日 最高裁判決 管理費等 >>

この判例による組合の留意点

● 専用使用権は一定の債務の元に認められる権利です。

一定の債務とは社会通念上相当額とされる負担金です。

 

分譲時にある特定の区分所有者だけが無償、または低額で駐車場専用使用権を取得したが、年月が経過するうちに駐車場不足などにより、専用使用権の廃止や使用料の増額などによりトラブルが発生する場合があります。
今回の判例により社会通念上相当な額であれば有償化、または増額ができるとしています。総会で区分所有者および議決権の4分の3以上の多数決議をもって専用使用権を変更等することが可能であるとしました。 ただし、専用使用権を変更等される者の不利益が受忍限度を超える場合は専用使用権者の承諾なしではできません。専用使用権の使用料などの有償化や増額の場合、まずは近隣相場を参考にしその金額が社会通念上相当になるよう注意しなければなりません。


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